第 1 日
マラングゲート(1970)〜マンダラハット(2700)





 朝食後、ホテルの近辺を散策して写真を撮ったりしていると、現地旅行会社の車が迎えに来た。カプリコン・ホテルからマラングルートの国立公園管理事務所があるマラングゲートまでは車で10分程であった。
 管理事務所近くの広場でガイド3人とポーター10人に引き合わされた。彼らは、我々の到着を待ちながら登山中の食料などの荷物を仕分けしているところであり、我々はここで前記Bのシュラフ等が入ったザックを預けた。我々が背負うのは雨具・水筒・昼食等を入れた日帰り登山のようなデイバッグであり、これではまさに大名登山だ。




  


 キリマンジャロへ登るには入山手続きをしなければならない。三角屋根の管理事務所で我々グループの隊長がガイドと共に書類に署名して手続きが完了。





 入山の手続きをしてから、銃を手にしている兵士の横を通り緑色の三角屋根のゲートをくぐって、いよいよキリマンジャロへ向けての第一歩を踏み出した。
 ゲートの脇に標高を示した案内板が立っている。ゲートは1970m、山頂ウフルピークは5895mであり、その標高差は3925m、富士山よりも高い。


   


ガイド、ポーター
 キリマンジャロの登山には、登山者1人についてガイド0.5人、ポーター2人を雇うことが義務付けられている。我々は5人のメンバーなので、ガイド3人、ポーター10人の計13人を雇うことになった。我々5人を加えると18人の大部隊である。
 チーフガイドは、エリアという名前の35歳のなかなか精悍な顔つきの男である。彼はガイドになる試験に合格して8年になり、今年20回目のキリマンジャロ登山のガイドとのこと。マラングから車で40分程のモシという町に住んでいて、家には妻と3歳になる「アグネス」と言う名前の女の子がいるとのことだ。
 サブガイドは、ロメルとウォルターという名前で、それぞれ37歳と27歳。
 ポーターは文字どおり荷物運びであり、我々のザックと5日分の食料や食器などを運んでくれる。我々が背負うのは前記Aの軽いデイバッグだけで、まるで大名登山だ。彼らは布袋に入れた我々のザックや食料などの荷物を器用に頭に載せてすたすたと歩いていく。
 ポーターはコックを兼ねていて、食事の際にはウェイター役もやってくれる。そして、朝と夕方には洗面用のお湯を洗面器に入れて運んでくれたりもする。
 


マンダラハット2700m
 マラングゲートからマンダラハットまでは、赤茶けた土の道幅の広いゆるやかな登りであるが、よく整備されているので歩きやすい。道の両側は背の高い熱帯樹林が生い茂り、シダのような植物が木に絡みついていて、日差しはまったくない。足元を見ると、フウロに似た薄紫色の小さな花が咲いている。
 途中、昼食のため30分程休憩をとったが、マラングゲートを出てからポレポレ(ゆっくり、ゆっくりの意味〈スワヒリ語〉)ペースでおよそ4時間、樹林帯が開けた草地の台地に着いた。そこがマンダラハットだった。標高2700mでマラングゲートから約700mを登った。
 ハットの前の木の下で女性が一人寛いでいる。彼女はドイツから休暇をとって一人でやって来たそうで、山頂はとても素晴らしかったと言い、これから下山すると言ってマラングゲートに向かって下って行った。
 

 マンダラハットには大きな三角屋根の食堂棟と小さな三角屋根の宿泊棟が草地の台地に点在している。緑色の三角屋根にはソーラーパネルが付いていて、食堂棟・宿泊棟や別棟のトイレにも蛍光灯が灯っている。ふと見たら壁にソーラーの配電盤が取り付けられているが、無論のことデジカメの充電などは出来ない。
 宿泊棟は2部屋に仕切られていて両側に出入口がある。一部屋は4人用のベッドが設えてあり、それぞれにちょっと厚みのあるマットが敷かれていて、日本の山小屋とはかなり趣きが異なる。
食事やミーティングをする本棟 宿泊棟 屋根にソーラーパネルが


ティータイム
 今回我々は5人のグループなので、4人部屋には1人はみ出すことになる。やむなく一番英語力のある隊長が隣のスイス人のグループと相部屋ということになった。
 ポーターからザックを受け取り、荷物を整理してから、食堂棟でお茶の時間である。テーブルの上にはコーヒーとチャイ(お茶)そしてテルモスにはマジ・モト(マジは水、モトは熱いの意)があって、何杯飲んでもよいことになっている。高山病対策にはたくさんの水分を摂ることが肝要だ。お茶菓子はビスケット。


窓の外では、後から到着したグループのポーターが荷物の整理をしている。
 


マウンディ・クレーター
 お茶が済んでから、ガイドのエリアとウォルターの案内でハットから20分ほどの所にあるマウンディ・クレーターへ散策。クレーター入口からほんの一登りすると、直径100m程のクレーターの縁に着いた。いかにも噴火口らしい形状だガイドから花の名前を教えてもらって写真を撮ったりしながらゆっくりクレーターを一周しているとき、ウォルターが「猿がいる」と教えてくれた。我々には分からなかったが、ウォルターが谷に向かって小石を投げると木の枝がゆれて、そこに猿がいることが分かった。ウォルターの目の良さと投石力はものすごかった。
 この猿はコロバス・モンキーという種類の猿で、クレーターからの帰り道でたくさん見かけた。
  


 マウンディ・クレーターの散策からハット(山小屋)へ戻ると、ポーターが洗面器に入れたお湯を持ってきてくれた。この日はたいして汗をかかなかったが、これで顔や手を洗うとなんとなくすっきりした気分になる。この後、ホロンボハットでもキボハットでも、毎朝夕、ポーターがお湯を運んでくれた。


ハットでの食事
 気分がすっきりしたところで、食堂棟で夕食になった。テーブルにカラフルなテーブルクロスが敷いてあり、これが我々グループの食事の際のテーブルの範囲である。テーブルクロスの上には、皿を中央にナイフとフォークが並んでいてまさに西洋料理のパターンである。ウェイター役のポーターはまずスープを出してきた。次いで、卵焼きやパンそして食べきれないほどのマンゴーやスイカなどの果物が盛られた皿を運んでくれた。ひととおり食べ終わるとコーヒーが出てきた。それにしても、ポーターはこんなに豪華な食材を山の上まで運び上げ、しかも調理してくれたものだ。
 食事が終ると、翌日のコースについてのミーティングである。起床時刻や出発時刻の確認、コース中の注意等の説明があって、第1日目の日程が終った。 ( この日の行動時間 10:30〜14:30 )
   


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