花  沢


 花沢は静岡県焼津市の北方の山間部の谷戸にある30戸ほどの集落です。三方を山に囲まれ、小さな川に沿って道路沿いに集落が形成されていて、長屋門を持った黒色の下見板張りの家屋が連なる独特の景観を示している。 
( 平成27年3月6日訪れる )





 つい先年までは林業、ミカン、お茶の栽培などを生業としていたが、特に明治後期には、輸出用のミカン産地として大いに栄え、ミカンの収穫期に雇用した人々の宿泊施設として、このような構えの農家住宅が形成されていったという。
 裕福そうな集落で、大きな主屋、長屋門や付属建物も全て黒板貼りの景観は見事なものであった。




















 花沢の集落は文化財保護法により「伝統的建造物群保存地区」に指定されている。これらの建物群と、これらと一体になっている周囲の環境を保存するため、平成26年2月に都市計画決定並びに保存計画が告示された。保存地区面積は約19.5ヘクタールで、花沢、吉津(よしづ)及び野秋(のあき)の一部を含み、総称して花沢と呼ばれる範囲です。




集落の一番奥の一段高い所に天台宗の古刹「法華寺」が建っている。


 創建年代はよく分からないが、奈良時代に造られた国分寺尼寺が起源であると伝えられている。16世紀後半に武田氏の軍によって焼かれ、その後、無住となった時期もあったが、現在は本堂と仁王門を中心とした小さなお寺です。






境内に小さな祠 乳観音が建っている。祠の脇に由来が書いてあり、そこには次のように書かれてありました。


むかし隣村の嫁が乳の出が悪くて悩んでいた。毎日赤児を抱いて神仏に願かけをして歩いたが効きめがない。ある日のこと、法華寺の門前で祈っていたら、大木の幹から光を発し観音さまが現れ「そなたの願いを叶えて進ぜましょう」とお告げをいただいた。
嫁の乳はその晩からあふれるように出がよくなり、赤児は村一番の元気な子に育ち、このことが近郷近在に知れわたり大評判になった。

以来法華寺は乳観音を祀り、近郷近在の母子に慕われ訪れる人が絶えない。
 



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