エピローグ


          



 かれこれ半世紀前の学生時代に自転車で四国路を一周したことがある。そのときに、高知の海岸線で若い修行僧と出会い、四国八十八か所のこと、同行二人(どうぎょうににん)のことを聞き、「奉納 四国八十八か所霊場巡拝」と書かれた小さな紙片をもらったことがありました。

 その後、歳を重ねるとともに八十八か所のことが気になり、いつしか八十八か所を巡ってみたいと思うようになった。特別に深い信心ごころがあってのことではなく、軽い気持ちでのお遍路の旅であり、いわばスタンプラリーといったところでした。
 でも、お寺を巡るうちに少しだけ弘法大師の辿った仏の道を知り、般若心経にも興味が湧いてきました。 

   「色即是空 空即是色」
 
   「子を叱るな 己が通った道  年寄りを笑うな 己が通る道」  

そして、遍路茶屋の店先に書いてあった養生訓
   長寿の心得ーー人生は山坂多い旅の道ーー
     還暦 60歳でお迎えの来た時は 只今留守と言へ
     古稀 70歳でお迎えの来た時は まだまだ早いと言へ
     喜寿 77歳でお迎えの来た時は せくな老楽これからよと言へ
     傘寿 80歳でお迎えの来た時は なんのまだまだ役に立つと言へ
     米寿 88歳でお迎えの来た時は もう少しお米を食べてからと言へ
     卒寿 90歳でお迎えの来た時は そう急がずともよいと言へ
     白寿 99歳でお迎えの来た時は 頃を見てこちらからボツボツ行くと言へ
  


 今回の四国の旅では、お遍路という共通の目的があるのでごく自然にお遍路さんと言葉をを交わし、背に「南無大師遍照金剛」と書かれた白衣を着ているので、お遍路さんでない人も声をかけてくれた。これは一人旅にとってはとても嬉しいことでありました。
 
 外国人のお遍路さんにも随分出会いました。ドイツ、オーストラリア、カナダ、韓国、彼らがなぜお遍路をやっているのか、私の乏しい語学力では訊けませんでした。もっとも、お遍路さんは人それぞれに重い心を持って歩いている人もいるので、それを訊くのはタブーであることも教わりました。 

 お遍路の傍らあちらこちら寄り道をして辺境の地にも足を延ばしてみました。北海道へ行ったときも九州へ行ったときも感じたことですが、若者が都会へ出ていってしまい過疎化が過疎化を生んでいました。小学校や中学校の統廃合はどこにでもありました。でも、なかには、Uターンしてきた人、定年退職を機にIターンしてきた夫婦もいました。みんな活き活きしていました。
 
 今回の旅でも、いろんな人と随分言葉を交わしました。その交わした言葉の中からその土地のことを随分知ることが出来ました。 日本は広いです。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 
そして、
こんな旅に、快く送り出してくれた妻、
健康な身体を授けてくれた今は亡き両親に感謝です。





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