遊子水荷浦


( 愛媛県宇和島市  平成24年10月25日 )

 愛媛県西部の宇和島市の市街地から車で40分ほどの三浦半島の突端に 遊子水荷浦(ゆすみずがうら)の集落がある。ここには海岸からせり上がるようにして段々畑が広がっている。この段々畑はペルーのマチュピチュを彷彿させてくれる。 



 遊子水荷浦は豊後水道に向かって延びる三浦半島の北岸から、さらに宇和島海に向かって分岐する岬のうちの小さな集落である。遊子水荷浦ーー子どもが遊ぶと書いて”遊子”(ゆす)と読む。なんとなくメルヘンチックな地名です。そして、水荷浦とは水が乏しく生活用水をを担いで運んでいたことに由来する地名です。
 岬の東南側の急傾斜の斜面には、等高線に沿うようにして小さな石を積み上げて造られたひな壇状の畑がある。この地方ではこの段々畑を”段畑”(だんばた)と呼んでいる。



 この段畑は、斜面に沿って幅1.5m、高さ1mで造られていて石段は6〜70段も続き、主にジャガイモを耕作している。そして、その上部には畑を見下ろすように墓地がある。
 この地区では、段畑は江戸時代の終わり頃に始まったが、明治時代の記録ではこの地区の斜面のほとんどが開墾されて8,000枚の畑があったそうだが、現在ではその多くが休耕し原野になっている。



右側に斜めにある白い線はモノレールのレール


 この段畑では主にジャガイモを栽培している。
 昔は収穫したジャガイモは全て人力で下へ下ろしていたが、現在では荷物運搬用のモノレールに乗せて下ろしている。

ジャガイモを掘り起こしている


モノレール




石垣の補修(放っておくと、石垣は緩むし雑草が生える)



石垣はほぼ直角に近い



耕作整備中の畑



 昭和30年代後半になると、水荷浦では養殖業が始まり段畑でのジャガイモ栽培は次第に少なくなっていき、最盛期には30ヘクタールあった段畑は平成に入ると2ヘクタールになってしまった。

 このような中で平成12年に地元有志による「段畑を守る会」が結成され、行政の支援も得て段畑の観光化・石垣の補修やジャガイモ使った焼酎の開発等を行っている。


段畑のすぐ下に段畑を守る会が運営する「だんだん茶屋」で、段畑で収穫されたジャガイモを主原料にした焼酎を売っていた。
付けられた名前が段畑の“段”と晩酌の”酌”で「段酌」というなかなかによいネーミングです。


1本買って夜に飲んでみたら、普通の芋焼酎と比べると芋の臭みがなくクセのないすっきりした味でした。
   




「段畑を守る会」の活動、行政の支援や耕作者の努力によって、昔の規模にはほど遠いが段畑は5ヘクタールに復活して観光客も訪れるようになっている。
そして、この集落には”終の棲家”として神戸から移住してきた夫婦もいました。
段畑はこの地域の活性化にも役立っているようです。




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