宮 之 浦 岳

( 平成18年11月18~21日 )

宮之浦岳(1935m)は、日本百名山最南の山で、鹿児島県屋久島に聳える九州で一番高い山です。

屋久島は雨の多い所であり、作家 林芙美子は「浮雲」の一節で次のように書いています。
  「ここは雨が多いンだそうですね。」
 「はア、一カ月ほとんど雨ですな。」
 「屋久島は月のうち、三十五日は雨という位ですからね・・」
 

とにかく雨が多い所らしいので、出かける前に登山靴・ザックなどに
防水スプレーを入念に吹きつけて出かけた。



プ ロ ロ ー グ

羽田~(飛行機)~鹿児島~(高速船・ジェットフォイル)~屋久島
 羽田を飛び立った飛行機は順調に飛び、鹿児島港からの高速船はものすごいスピードであっという間に屋久島・宮之浦港に着いた。
 この日は宮之浦の旅館泊まりで、夕食後にメンバー14人の自己紹介があってから、登山ガイドに引き合わされて2日間のスケジュールの説明や山中での食事の持ち物の分担が手渡された。
 当初の予定では淀川登山口からの入山であったが、天候状態を考慮し逆コースにして白谷雲水峡から入山し淀川登山口へ下山する旨が告げられた。
 この夜は一晩中雨が降っていたが、幸にも夜明け前には小降りになっていた。




第1日 白谷雲水峡~縄文杉~新高塚小屋

 午前6時、ヘッドランプの灯りを頼りにしとしと降る雨の中を登山の開始。1時間ほど歩いて白谷小屋に着くころには雨もほとんど上がっていた。辺りは大分明るくなりランプは不要だが、樹林の中の登路は未だ薄暗い。映画「もののけ姫」のモデルにもなったといわれる苔むした樹林を写真に撮りたかったのだが、あまりにも暗くてカメラに収めることは出来なかった。
 荒川登山口との分岐点からは安房森林鉄道のトロッコ道を進む。このトロッコ道は勾配4%でレールの中ほどに板が敷いてあって大変歩きやすい。トロッコ道を1時間ほど行くと橋が架かっている大株歩道入り口に着いた。この頃になると雨も上がり薄陽が射してきて雨具を脱いだ。
 そして、サルもトロッコ道に姿を現してきた。ヤクザルと呼ばれるこのサルは本州のサルに比べるとかなり小さい。ガイドの説明によると、野生動物は北に住むモノ程大きく、その典型的な例がホッキョクグマだそうである。



  



ウィルソン株
 トロッコ道と別れて大株歩道入口から急坂を登るとウィルソン株に着いた。
 この株は1914年にアメリカの植物学者ウィルソン博士が発見し、海外にも紹介したという。株の内部は、畳10枚は敷ける空洞をもち、空洞になった株の中から上を見上げると♡型が表れていて空が見え、下には清水が流れ、山の神も祀ってある。
 この杉が伐採されたのは約400年前である。一説によると、豊臣秀吉が京都・方広寺を建立するために切り出されたという。伐採時の樹齢は不明だが、切り株の大きさから推定して、3000年を下ることはないといわれている。



  



この後、巨木の森が続いた。

一般に樹齢1000年以上のものを屋久杉といい、1000年に満たないものは小杉と呼ばれているそうだ。
翁 杉 夫婦杉 大王杉 



 さらに進むと、屋久島の象徴ともいわれる縄文杉の前に出た。

縄文杉

 縄文杉は屋久杉を代表する古木であり、推定樹齢は7200世界最古の植物といわれている。
 この杉は小杉谷の標高1300メートルの地点にある杉で、樹高30m、胸高囲16.4mもある。発見された当時(1966)は、発見者の名前をとって大岩杉と呼ばれていた。
縄文杉という名前の由来は二説あり、当時推定されていた樹齢が4000年以上で縄文時代から生きていたという説と、奔放にうねる幹の形が縄文土器に似ているという説である。


 

新高塚小屋へ
 縄文杉を出発する頃からまた雨が降ったり止んだりするようになった。この辺りは石楠花の群生地帯である。本州では見られないような大木であり、初夏の頃の花の時期はきっときれいだろう。
 縄文杉から1時間半程で小高塚岳南面鞍部にある新高塚小屋に着いた。しっかりした造りの2階建ての小屋で60人ほどが泊まれる無人の山小屋だ。この日はかなり混雑していて小屋前のテント場で幕営するパーティーも何組かいた。
 夕食は、ツアー参加者が分担して運んだ山では定番のレトルト食品。これをツアーガイドがお湯で温めるだけだが、山で食べると美味しいものだ。そして、誰かが差し出した漬物とウイスキー、これも美味でありました。
 

 


 夕食を食べているとき、立派な角を付けた雄鹿が姿を現した。ヤクシカは本州や北海道の鹿と比べると体長がやや小さく毛色が濃い。
 ふと見ると、屋久島が南限といわれるヒメシャラはその幹の太さもさることながら、まるでワックスをかけて磨いてあるかのように光っている。


   



第2日 新高塚小屋~宮之浦岳~淀川登山口

宮之浦岳
 新高塚小屋から3時間半、待望の宮之浦岳に着いた。山頂は二峰あり、1等三角点は西峰にあって標高1936m九州最高峰である。山頂一帯はヤクシマダケ(ヤクザサ)に覆われている。幸いにも雨は上がっていて所どころ青空が広がっているが展望は利かない。晴れていれば、遮るものなく屋久島のすべての山が樹海の上に望める筈なのだが・・・・・

やっと青空が出た山頂

 
宮之浦岳山頂で                                山頂を下る


花之江河
 山頂から下り始めて30分もすると青空が出てきた。だが、宮之浦岳と永田岳は相変わらず雲の中でその姿を見せてくれない。
 翁岳や投石岳の巨岩・奇岩を見ながら下る。屋久島の岩は花崗岩で靴が滑らないので歩きやすい。また、木道がいたる所に敷かれ、急な箇所は階段になっている。
 途中、昼食を食べてゆっくりし、12時半に花之江河に着いた。湿原の背後に黒味岳を仰ぎ、標高1600mに位置する南限の泥炭層湿原が広がっている。湿原の中央に石の祠が奉ってあって屋久島山岳信仰の名残りを残している。
  

  


淀川へ下山
 花之江河から少し下ると高盤岳展望台がある。展望台からは枯存木の森を隔てて巨岩(トーフ岩)が眺められる。トーフのような形をした不思議な岩だ。
 モミ、ツガ、ヒメシャラ、ヤマグルマなどの大木が頭上を覆う道を下り、午後3時過ぎに淀川登山口に下山して2日間の山旅を終わった。
 2
人のガイドとツアー添乗員も入って総勢14人の記念写真はみんな満足気だった。




エ ピ ロ ー グ

 この日の夕食は、屋久島特産の焼酎「三岳」を飲みながら多いに盛り上がった。そして、翌日はマイクロバスで島内観光をしてから夜遅い飛行機で帰宅した。
  
              千尋の滝

 初めてのツアー登山への参加だった。これまでこういった山登りをしたことがなかったので、知らない人とどのような山行になるのか、皆について行けるのか多少不安があった。ところが、これがものすごく楽しくて、ツアー登山を見直してしまった。
 参加者は同世代の男4人女7人。ほとんどの人が一人での参加だったが、和気藹々の楽しい4日間のツアーであった。ガイドが2人付いたのも良かった。2班編成にして、きめ細かくメンバーに気遣いしてくれ、植生の知識が豊富で詳しく説明してもらった。


 これで日本百名山は98山になった。残るのは北海道・幌尻岳と新潟県・妙高山。来年中には区切りをつけたいと思っているが、難関の幌尻岳はツアー登山に参加しようと思っている。



今回の宮之浦岳ツアーの日程
 11/18 羽田~(飛行機)~鹿児島~(高速船・ジェットフォイル)~屋久島・宮之浦(泊)
 11/19  宮之浦~白谷雲水峡~ウイルソン株~縄文杉~新高塚小屋(泊)
 11/20 新高塚小屋~宮之浦岳~花之江河~淀川登山口~宮之浦(泊)
 11/21 屋久島観光~鹿児島~鹿児島観光~羽田



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