離島の老漁師

 20059月に日本百名山の一つである北海道・利尻岳に登り、下山してから海辺の民宿に泊まった。夕食までに間があったので海岸を散歩すると、番屋と呼ばれる漁師の作業小屋の前で高齢の漁師が漁具の片づけ作業をしていた。

 声をかけたら手を休めて、ウニ漁やコンブ漁のことを話してくれた。そして、アザラシはウニやコンブを食い散らかすので漁師にとっては天敵だとも言っていた。写真を撮っても良いかと訊いたら快く応じてくれ、ちょっと緊張気味に”きをつけ”をしたいい顔をした老漁師だった。                     

 それから5年が過ぎて、20107月に再び利尻島と礼文島を訪れた。今度は離島でゆっくりするのが目的だったので1週間ほど離島でのんびり過ごした。

 利尻島ではキャンプ場に3日間泊って自転車で島を一周したりウニやイクラを食べ、日本海に沈む夕陽を写真に撮ったりして過ごした。

 そんなある一日、5年前に写真を撮った漁師を探しに行ってみた。名前は聞いていたが住所は聞いていなかった。何軒か商店が並んでいる一軒のお店に入って高見(仮名)さんの家はどこかと尋ねたら、高見姓の家は何軒かあるらしいので高見さんの写真を見せると、ちょっと口篭もったが家を教えてくれた。

 教えてもらった家へ行くと奥さんが出てきて「主人は2年前に亡くなりました」と言う。写真を撮った経緯を話すと、そんなことがあったことを主人が話していましたと言う。この写真を撮った数か月後に肺ガンが見つかり札幌の病院で手術をしたが、その2年後に80歳で亡くなったとのことだ。少し大きめにプリントした写真を見て、「まだ元気だった頃の最後の写真になります」と言って深々と頭を下げられた。

 「なにかの縁なのでお線香を・・・」と言われて仏壇のある部屋に通された。
 仏壇の前に座りお線香をあげて手を合わせて写真を仏壇に供えました。部屋には高見さんの遺影が飾ってあり、写真に写った高見さんはちょっと笑っていて「よく来てくれたな〜」と言っているようでした。

2010,7,18

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