# 4

佐世保の若い警官
 2012年5月に九州で出会った若い警察官の話です。
 5月とは思えないような暑いこの日、私は長崎県佐世保を車で旅していた。佐世保の海上自衛隊資料館を見学してから市街地を見物して佐世保バーガーを食べようと思い、駅近くの駐車場へ行くときに誤って進入禁止道路に入ってしまった。ここで運悪く警官に見つかってしまった。
 交通標識を見落としてしまった私が悪いのだが、「どこに目つけて走ってんだー」と、20代半ばと思しき警官は、なんとも横柄な態度で口の利き方も酷い。
 「川崎から仕事で来たのか?」
 「いえ、観光旅行です」
 いろいろ訊かれた後に、罰金はいくらかと尋ねたら、「罰金じゃぁねぇ、反則金だぁ〜」と覚えておけと言わんばかりの口振ぶりだ。そして、反則金7,000円の納入書を書きながら、「おめぇ 酒飲んでねぇだろうな〜〜」
 この言葉に遂に堪忍袋の緒が切れた。反則切符もきられてしまったことだし、こんな若造にいつまでも言いたい放題しゃべらせておくわけにはいかない。

 ここからは反撃モードにチェンジ・・・・・
 「オイ もう一遍いってみろ」
 「・・・・・・・」
私 「そんな酷い口の利き方で、本当に警官なのか?」
 「制服を着ているから警官だって分かるだろう〜」  (ここまでは威勢がよかった)
 「ガードマンだって似たような服を着てるし、制服を横流しするやつだっている」 「君も警官の端くれだったら警察官職務執行法を読んだことがあるだろう〜 そこに何て書いてあるか言ってみろ〜」
 「警察手帳を提示すると書いてあります」  (言葉つきが変わった)
 「知っているじゃないか〜 そのとおりだよ」
 彼が差し出した警察手帳には「佐世保警察署 巡査 ○○○○」と書いてあった。

 この後 延々と反則金7,000円の根拠法令、道路交通法、長崎県公安委員会規則等を質したら、彼はその都度冊子を見ながらしどろもどろに応えたが、彼の言葉使いは次第に丁寧になっていった。
 この間、私は陽射しを避けた車内の座席に座り、彼は強い陽射しを受けて立ったままで額に汗。この汗は暑さのためだけではないようだ。きっと、彼は内心「今日はトンデモナイヤツを捕まえてしまった」と思っているようで、それが顔に現れている。
 この時点で、主導権は私の方に移っていた。さらにダメ押しで〜〜
 「ところで、長崎県警の本部長は誰がやっているのかネ」
 「・・・・・・・・」
 「君は上司の名前も知らないのか〜 まぁ いいや」
 この言葉を彼がどのように受け取ったか知らないが、彼はかわいそうなくらいに委縮していた。

 あまりしつこく虐めて、あらぬ方向に転じてもいけないので、頃合いを見計らって彼を解放してやることにした。
 別れしな、「君は交通取り締まりに関する法令をもっと勉強するべきだな〜 それと言葉遣いもな〜」と言ったら、彼はしょんぼりして、後ろを振り返りもせずに無言で立ち去った。

<後日談> 後日、このことを友人に話したら、友人は「これだけ虐めたら、反則金7,000円の半分ぐらい取り返した気分だろう」と言っていた。

2012,5,11
 


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