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青 鬼

 青鬼(あおに)は、長野県北西部白馬村の中心街の北東にある山に囲まれた標高750mの台地にある集落である。青鬼へのバスの便はないので、あらかじめJR大糸線白馬駅から青鬼へのタクシーを予約しておいた。

 くねくねした急坂を登って40分ほどで着いた青鬼は、14棟の寄棟造りの茅葺屋根の大きな建物が建っている。現在では鋼板葺きで覆われているが、「かぶと造り」と呼ばれる正面の屋根を短く切った形になっている。これらの家が緩やかにカーブする道に沿って整然と建ち並んでいる。どの家も真壁造りであり白壁と黒い板壁とのコントラストがきれいだ。
「かぶと造り」は屋根を切ることで二階部分の採光と風通しを良くした建築様式で、養蚕が盛んな長野県や群馬県、山梨県などで多く見られる。
 通常の「かぶと造り」は妻側の屋根を切るのに対し、青鬼集落など北信濃のものは平側の屋根を切っており、どっしりと安定感のあるたたずまいとなっている。
 最も古いものは19世紀初頭に建てられたものであると言われている。土蔵は主屋から少し離れた所に建てられていて、万一の火災を考慮したものである。また土蔵には冬に備えて雪囲いの木組みが組んである。

 また集落の入口には、集落の守り神である「庚申塔」や仲睦まじい夫婦を象った「双体道祖神」などの石碑が置かれており、青鬼集落にさらなる風情と魅力を与えている。

 青鬼(あおに)という不思議な地名については諸説あるらしいが、隣村に悪い鬼がいて穴に埋められた。その穴が反対側のこの村に通じていて、改心した鬼が良い青鬼になって出てきたので青鬼村という名前がついた。そして、隣村には鬼がいなくなったので鬼無里(きなさ)村という名前がついたと言い伝えられている。
                                   
平成29年㋇


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